小さな水場には
もう3人の女達がいた
わたしは水のちかくに座り
プカプカと鯉は浮かんでいる
フィリピンの国のような
わたしの耳に入ってきた言葉
それから水の音は響く


振り返ると
しっかりとした輪郭の化粧をしてあんなに熱心に話をしていた姿は
なくなっていた
ひんやりと

大きな赤樫の樹液とまじり合い
土に浸みこみ伏して
流れてきた

ふと 嗅ぐとうっすらと生ゴミの臭いがする
電車の振動が頭の上を行きすぎて
商店街からは重くなったシャッターを乱暴に閉める音がした

赤樫がしだれる花を滝のように咲かせ終えた頃

ひとびとの影は宵の金星に溶けていく
犬は人間との散歩に寄り道をし
花壇の葉っぱは埃を吸う
水面と亀と鯉は相変わらず安穏とうごめく
チョロチョロと
弧をつくる水は数本噴きあがりつづける

ココハトクベツナバショ

祈りを置いて石の椅子から立ち上がる