曇る視界

まばたきながら
プラスティックごみを置き
頭をあげる
悪戯心がわいたように
フローラに呼ばれ
そのまま
電車に乗る

途中下車

生協で
本日のご奉仕品というシールの筍弁当
酒そして紙コップとペットボトルの水を買う

車窓からは
滑らかな海の表面を
パテで削ったように色を変え
その四角を浮きで形どりながら
規則的に並んでいる
海苔の養殖場が見える

普通しか止まらない駅の
改札を出て
左にゆるい坂道を登る
すーと風が吹いてくると
桜の花の匂いが全体を包み

ずんずん歩いていって
場所を定め座るそこは
わたしの影と松の影が混じる場所だった
振り返るとオレンジの帯をした電車は
桜並木の背景となり通ってゆく
遊具で遊ぶ子供たちの声と
ワインの重さで下がった紙袋をもったカップル
きれいに練られたチョコレートの毛並みをした
アフガンハウンドが散歩して
「 ようこそ 」
犬の首輪には死神のタロットカードが
プレートみたいに下がっている

わたしと桜と松の影が乾杯をした紙コップを
平らな地面に置くことにする
土に混ざりガラスの破片が一つあるけれど
まだ太陽の方向が僅か海にあるから
キラリとは光ってくれない

海釣り公園の建物はどこか宇宙船のよう
しかるべき夜には飛び立ち
人間を拉致してはつぎつぎと魚にするのかも
知れない

枯葉の上に大きな蟻が乗ってこちらを
じっと見ている
嘆きながら
何かを探して

春ひそか
笛の音は響く

わたしは桜のポケットに入っている


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